東京大学

概要
調査番号 0604
調査名 アジア・ヨーロッパ調査(ASES),2000
寄託者 猪口孝
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教育目的(授業など)の利用 教育(授業・卒論等)も可

利用期限

一年間
データ提供方法 ダウンロード
オンライン集計システムSSJDA Data Analysis 利用不可
調査の概要  アジア・ヨーロッパ調査(The ASia-Europe Survey)(ASES) は,1999年度~2002年度科学研究費補助金特別推進研究「民主主義の機能不全の理論的実証的研究」として,2000年秋にアジアとヨーロッパの18カ国でおこなった世論調査である(研究代表者:猪口孝(東京大学東洋文化研究所(調査時)),研究分担者:蒲島郁夫,研究協力者:ジャン・ブロンデル,イアン・マーシュ,リチャード・シノット)。

 民主主義の機能不全が指摘されて久しい。民主政治は理想の政治体制ではないが,ありうるすべての政治体制のなかでベストであるとのほぼ共通の認識に立って,民主政治がどのように機能しているかについて全世界で研究が精力的にすすめられている。それらの共通の問題点をみると,第一に,一国中心的な枠組みが強く,歴史や文化が大きく異なっている政治体制を比較する観点が弱い。第二に,比較研究が多くなってはいるが,先進民主主義国の比較がほとんどである。民主主義が先進国中心であった時代はともかく現在のように過半数の民主主義国が途上国である時には深刻な問題である。

 本研究計画の目的は太平洋アジア(日本・韓国・中国と東南アジア国家連合の6カ国計9カ国)と西ヨーロッパ(欧州連合の9カ国)の欧亜大陸18カ国を対象に,民主主義の機能不全がどのように認識されているか,いいかえると,民主主義の正統性と有効性がどのように認識されているかを正面から国際比較可能な形で問いかけ,分析し,経験的データで裏付けできる解答を提示することである。一国中心主義的研究や先進国中心の研究から,先進国と途上国の民主主義体制のみならず,民主化途上の体制をも含めた国際比較に正面から取り組む。

 同様に,本研究計画のもう一つの目的は民主主義の機能不全という現代の最重要な問題のひとつを正面からとりあげ,国際的な学術研究をリードすることである。総じて,知的,組織的,財政的なイニシアティブを積極的にとり,海外発信を強力に行った研究計画であった。

 概念的には,2つの鍵となる命題に沿って研究を組み立てた。
Ⅰ 民主主義がよく機能するかどうかは,市民がより大きな社会とどのように関係付けるかに依る。
Ⅱ 民主主義がよく機能するかどうかは,グローバリゼーションが国内民主制度を実効的にきり崩すようになるかに依る。

 より具体的には以下のような枠組みを固め,英文による標準調査票を作成し,各国言語に翻訳して実施した。
Ⅰ-1 国家のようなより大きな社会実体と自らをどのように同一視するか。
Ⅰ-2 議会,裁判所,政党,マスメディアなどの社会制度にどこまで信頼を置いているか。
Ⅰ-3 日常生活や社会に満足しているか。
Ⅱ-1 グローバリゼーションのインパクトを日常生活で感じるか。
Ⅱ-2 グローバリゼーションのインパクトを社会全体に関して感じるか。
Ⅱ-3 グローバリゼーションのインパクトを民主主義に関して感じるか。
データタイプ(量的調査/質的調査/官庁統計) 量的調査: ミクロデータ
調査対象 各国とも18歳~79歳の男女。
調査対象の単位 個人
サンプルサイズ 各国ともサンプルサイズは800
調査時点 2000-10 ~ 2000-12
日本     2000年10月
韓国     2000年10月
中国     2000年10月
台湾     2000年10~11月
シンガポール 2000年10~11月
マレーシア  2000年11~12月
インドネシア 2000年10~11月
タイ     2000年10月
フィリピン  2000年10月
イギリス   2000年10月
アイルランド 2000年10月
フランス   2000年10~11月
ドイツ    2000年10~11月
スウェーデン 2000年10~11月
イタリア   2000年10月
スペイン   2000年10月
ポルトガル  2000年10~11月
ギリシア   2000年10~11月
対象時期 2000 ~ 2000
調査地域 日本
韓国
中国
台湾
シンガポール
マレーシア
インドネシア
タイ
フィリピン
イギリス
アイルランド
フランス
ドイツ
スウェーデン
イタリア
スペイン
ポルトガル
ギリシャ
日本     全国
韓国     全国
中国     8市(北京,上海,広州,重慶,西安,南京,大連,青島)
台湾     全国
シンガポール 全国
マレーシア  半島のみ
インドネシア ジャワ島のみ
タイ     全国
フィリピン  全国(ただしミンダナオ島は除く)
イギリス   全国(ただし北アイルランドは除く)
アイルランド 全国
フランス   全国
ドイツ    全国
スウェーデン 全国
イタリア   全国
スペイン   全国
ポルトガル  全国
ギリシア   全国
標本抽出 確率: 多段抽出
確率: 集落抽出
確率: 層別抽出: 比例割当法
非確率: クオータ抽出
日本     多層ランダム・クラスター・サンプリング
韓国     多層ランダム・サンプリング
中国     確率比例
台湾     行政単位「里」を基礎にする。まず里をランダム
       に選ぶ。各里の中で5つおきに面接者を選ぶ。
       少なくとも3回コンタクトをとる。
シンガポール 公的な集合住宅住民と私的土地付き住宅居住民
       を分ける。キッシュ・グリッド(Kish Grid)と
       呼ばれるランダム化の方法で被面接者を選ぶ。
マレーシア  多段階確率
インドネシア ランダム(Kish Gridによる)
タイ     多段階ランダム・クラスター
フィリピン  多段階確率比例ランダム
イギリス   地域・年齢・社会経済階級による割当法
アイルランド 多段階確率
フランス   多段階確率
ドイツ    多段階確率
スウェーデン 多段階確率
イタリア   比例層化
スペイン   多段階層化ランダム
ポルトガル  性・年齢・社会経済的地位に基づいた割当法
ギリシア   行政地域と都市化による割当法,各地域では
       都市区では3軒おき,中間区では2軒おき,
       村落部ではすべての家庭を訪れる。それぞれ
       の家庭では性と年齢によって割り当てる。
調査方法 個別面接法
各国とも調査員による面接聴取法

アジアおよび欧米の研究者の協力を得て質問票を作成した。英語で作成された標準質問票を各国の調査会社が現地語に翻訳し,バックチェックを経て実際に用いられる質問票が作成された。

言語は次のとおり
 日本      日本語
 韓国      韓国語
 中国      北京語
 台湾      台湾語
 シンガポール  マレー語・中国語・英語
 マレーシア   マレー語・中国語・英語
 インドネシア  インドネシア語
 タイ      タイ語
 フィリピン   タガログ語・イロカノ語・ビサヤ語
 イギリス    英語
 アイルランド  英語
 フランス    フランス語
 ドイツ     ドイツ語
 スウェーデン  スウェーデン語
 イタリア    イタリア語
 スペイン    スペイン語
 ポルトガル   ポルトガル語
 ギリシア    ギリシア語
調査実施者 研究代表者:猪口孝(東京大学東洋文化研究所)
実地調査は日本リサーチセンターをコーディネーターにして,ギャラップ・インターナショナルのネットワークで行った。詳細は以下のとおり。
 日本     日本リサーチセンター
 韓国     ギャラップ・コリア
 中国     中国社会科学院新聞与伝播研究所
 台湾     世論調査台湾
 シンガポール テイラー・ネルソン・ソフレス
 マレーシア  テイラー・ネルソン・ソフレス
 インドネシア テイラー・ネルソン・ソフレス
 タイ     CSNリサーチ・グループ
 フィリピン  アジア・リサーチ・オーガニゼーション
 イギリス   リサーチ・インターナショナル
 アイルランド アイリッシュ・マーケティング・サーベイズ
 フランス   テイラー・ネルソン・ソフレス
 ドイツ    EMNID研究所
 スウェーデン シフォ
 イタリア   ドクサ
 スペイン   クオタ・ユニオン
 ポルトガル  シグマ・ドス
 ギリシア   リサーチ・インターナショナル
DOI 10.34500/SSJDA.0604
委託者(経費) 文部科学省科学研究費
寄託時の関連報告書・関連論文 「民主主義の機能不全の理論的実証的研究 課題番号11102001 平成11年度~14年度科学研究費補助金特別推進研究(2)研究成果報告書」,2003年3月,研究代表者 猪口孝
第1巻 「Globalisation, states and the people : a survey of popular attitudes to globalisation in nine Western European and nine East and Southeast Asian countries 」
第2巻 「Political cultures : citizens and politics in Western European and East and Southeast Asian」
第3巻 「Citizens, the State and globalization : country profiles」
第4巻 「Changing values and the challenge of democracy in East and Southeast Asia」
第5巻 「グローバリゼーションと政治文化」
第6巻 「現代日本政治の普遍と特異 : 歴史・比較分析」
第7巻 「アジアとヨーロッパ18カ国で行なわれた世論調査の質問表と関連資料」
猪口孝「グローバリゼーションは人の悩みをさらに深めるものなのか?」東京大学東洋文化研究所編『アジア学の将来像』,2003年,東京大学出版会,229-266頁。
猪口孝「日本におけるソーシャルキャピタルの基礎拡充」猪口孝『日本政治の特異と普遍』,2003年,NTT出版,42-100頁。
猪口孝「グローバリゼーションはよいガバナンスをもたらすか?」『年報政治学2003』,2003年,199-227頁。
猪口孝『「国民」意識とグローバリズム:政治文化の国際分析』,2004年,NTT出版。
Ahn, Chung-Si, and Jijo Jang. 2006. “Public Support for Market Reforms in Nine Asian Countries: Divergence of a Market-based Economy.” In Russel J. Dalton and Doh Chull Shin, eds. Citizens, Democracy, and Markets around the Pacific Rim: Congruence Theory and Political Culture. Oxford: Oxford University Press, 181-200.
Blondel, Jean, and Takashi Inoguchi. 2002. “Political Cultures Do Matter: Citizens and Politics in Western Europe and East and Southeast Asia.” Japanese Journal of Political Science 3(2): 151-71.
Blondel, Jean, and Takashi Inoguchi. 2006. Political Cultures in Asia and Europe: Citizens, States and Societal Values. London: Routledge.
Everts, Philip, and Richard Sinnott. 2002. “Opinion publique, défense européenne et intervention militaire.”Opinion publique, défense européenne et intervention militaire 48: 147-58.
Inoguchi, Takashi. 2002. “Voice and Accountability: The Media and the Internet in Democratic Development.” Background paper for HDR 2002, available at http://hdr.undp.org/en/reports/global/hdr2002/papers/Inoguchi_2002.pdf.
Inoguchi, Takashi, and Jean Blondel. 2007. Citizens and the State: Attitudes in Western Europe and East and Southeast Asia. London: Routledge.
Inoguchi, Takashi, and Ian Marsh. 2008. Globalisation, Public Opinion and the State: Western Europe and East and Southeast Asia. London: Routledge.
Inoguchi, Takashi, Hideaki Uenohara, and Hiroko Ide. 2008. “Does Globalization Reduce or Enhance Democracy? A Micro Analysis Based on an 18 Country Cross-national Asia-Europe Survey.” Behaviormetrika 35: 73-96.
Lyons, Pat. 2006. “Ireland's Political Culture: Overlapping Consensus and Modus Vivendi.” Paper for the 20th World Congress of International Political Science Association, July 9-13, Fukuoka, Japan.
Maeda, Yukio. 2006. “External Constraints on Female Political Participation.” Japanese Journal of Political Science 6(3): 345-73.
Mayda, Anna Maria, Kevin H. O'Rourke, and Richard Sinnott. 2007. “Risk, Government and Globalization: International Survey Evidence.” IIIS Discussion Paper 218, available at http://www.tcd.ie/iiis/pages/publications/discussionpapers/IIISDP218.php.
SSJDAデータ貸出による二次成果物 二次成果物一覧はこちら
調査票・コードブック・集計表など [日本語調査票][ASES_Questionnaire]
主要調査事項 (1)アイデンティティ
 自分を××人(国籍)であると考えるか,国籍,自分が××人(国籍)であることの重要性・その10年間の変化,日本・日本人が外国人から尊重されていると思うか・その10年間の変化,日本・日本人は国際政治・経済上公平に待遇されているか・その10年間の変化,国籍以外のグループ帰属意識,超国家的帰属意識・その重要性・10年間の変化,日本人であるために重要なこと(市民権,日本語,日本人であると感じる,日本人として生まれた),自国人であることの誇り,日本を誇りに思う程度(民主主義体制,世界への政治的影響,社会福祉,経済の業績,軍事)。

(2)信頼感
 日本の政府・機関に対する信頼感(国会,政党,政府,法制度と裁判所,政治指導者,警察,官公庁・役所,自衛隊,大企業,マス・メディア),世界の団体・機関に対する信頼感(外国の大企業,国連UN,世界貿易機構WTO,NATO北大西洋条約機構,世界銀行,東南アジア諸国連合ASEANと日本・韓国・中国),現在の日本の外務大臣名,現在の国連の安全保障理事会の常任理事国5カ国名。

(3)社会についての考え
 社会や政治・選挙についての考え(8項目),生活・日本・世界についての不安感(仕事,健康,家庭生活,地域,日本,世界情勢),この10年間の日本の情勢変化,この10年間の世界の情勢変化,日本についての不安感・日本政府の対処の評価(経済,政治腐敗,人権問題,失業問題,犯罪,行政サービスの質,移民の入国,民族対立,宗教対立,環境問題),日本で起こっている問題の原因は国内か世界か(経済問題,失業問題,環境問題),日本の社会のあり方への考え(6項目)。

(4)グローバリゼーションの影響
 生活の中のグローバリゼーションの影響(8項目),グローバリゼーションは「アメリカナイゼーション」「米国化」か,日本や世界の諸問題の重要度の5年間の変化(人権問題,環境問題,女性の権利問題,失業問題,発展途上国問題,難民や亡命者問題,アジアの国で戦争が起こる危険性,アジア以外の国で戦争が起こる危険性),その日本や世界の諸問題の解決方法・当事国のみか他国共に行うべきか,外国の情報や外国人とのやりとりなど(9項目),社会のあり方への考え(7項目)(競争,社会福祉,日本政府,国の運営,経済問題と政府の介入など)。

(5)政治・選挙への考え・行動
 団体や機関から生活に受けている影響の程度(日本政府,ASEANと日本・韓国・中国,国連,多国籍企業),政治への関心度,政治的立場(保守・革新),保守・革新という政治的考え方の重要度,政治活動の経験度(11項目),国会議員選挙への投票行動,地域の選挙への投票行動,親近感を持っている政党,直近の国会議員の選挙で投票した政党,日本の政治への総合的満足度,一般的な考え方(7項目)(収入の平等,経済成長と環境保護,女性の役割,個人の主張と社会の協調性,経験豊富な年令の高い人の意見,社会の利益と家族,社会と自分)。

(6)属性等
 政治に関する情報入手媒体,現在の生活への総合的満足度,英語力の程度,教会・寺社への参拝頻度,宗教,性別,年齢,同居家族,最終学歴,教育を受けた年数,就業形態,職業,官公庁や公的機関か民間企業か,労働組合への所属有無,この10年間での失業経験有無,家庭の生活水準,世帯年収,民族・人種。

(7)日本の政党
 最近の小選挙区選挙で投票した政党,最近の比例代表選挙で投票した政党,望ましい政権の形,等。
公開年月日 2008/11/19
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政治行動と政治的態度
政治的イデオロギー
文化的アイデンティティーとナショナルアイデンティティー
社会状況と社会指標
SSJDAオリジナルトピック 国際比較・外交
政治・行政・選挙
社会・文化
バージョン 1 : 2008-11-19
特記事項