概要 |
調査番号
|
0566
|
調査名
|
インドの女子労働力に関する意識調査(デリー・ガージアバード工場パネル調査),1990・1994
|
寄託者
|
清川雪彦
|
利用申込先・承認手続き
|
利用方法の詳細はこちら
SSJDAが利用申請を承認したときに利用できる |
教育目的(授業など)の利用
|
教育(授業・卒論等)も可 |
利用期限
|
一年間 |
データ提供方法
|
ダウンロード |
オンライン集計システムSSJDA Data Analysis
|
利用不可 |
調査の概要
|
1980年代以降多くのアジア諸国は,経済自由化政策への転換が急速に進展した。発展途上国の工業化は,大量の外資の流入により,資本や技術,経営資源の移転は進みつつあるが,その成否は労働力(含む直接監督者層)の質の向上如何にかかっている。 本調査研究は,そうした近代的工業労働力形成の問題を,いわゆる合理的な「経済人」の枠組みを離れ,労務管理あるいは職務意識という労働者個人の態度やモラール(士気)を規定する心理的価値付け(価値意識)の側面から捉え明らかにしようと試みたものである。
高いモティベーションを有するには,昇給や昇進といったインセンティヴだけでなく,生産現場や企業組織に対する心理的帰属感,あるいは工場形態による生産方法や職務管理および職場生活などへの肯定感,さらにはそこで支配している価値観や共通意識への共鳴など(それらは総称してコミットメントと呼ばれる)が,当然その前提として存在していなければならない。 言い換えれば,途上国の工業労働力の質を問題にする場合,単に労働生産性や狭義の労務規律,あるいは学歴水準など外的に観察可能な側面だけでなく,労働者個人の価値観や意識,とりわけモティベーションに深く関連する職務意識や態度こそが,決定的に重要な意義を有する。
こうした問題意識から,1985年から1998年の間に予備調査,パネル調査等を含め9回,インド,中国において工場労働者の職務意識に関わる現地調査を,現地研究者,現地企業等の協力を得て行い,比較分析している。標本数は累計1000名を超える。 現地調査の過半は,文部省の科学研究費(複数)のほか,日経奨励財団や松下国際奨学財団,日大商学部特別研究費等々の助成を受けて実施された。
各調査対象とも,基本的にはチームワークや労務規律,あるいは品質意識や広義の熟練などが問われる典型的工場生産システムを有する(と想定される)機械産業部門より若干の企業が選択されている。 ただし季節労働者や非組織部門のムスリム労働者の意識や勤務態度など,かなり限定された問題を考察しようとする工場調査にあっては,当然それらの対象を最も典型的な形で含む産業部門(この場合は製糖業と製陶業)から企業ないし作業場が抽出されている。
インドでの調査は,現地研究者に斡旋役を依頼し,彼らを通じ製糖工場や電器機械工場あるいは製陶協会などの紹介を受けた。 他方中国の調査の場合には,まず共同研究プロジェクトが組織され,その分析目的(企業レベルの総合調査)に応じ約150企業が系統抽出法により選出された後,その中から企業改革の進展度や所有形態などの特性を考慮し有意抽出されている。 このように企業の選択は,調査の実施可能性に大きく制約されざるをえないが,最終的調査対象は労働者個人(およびその比較参照グループとしての管理者)であるから,上記のごとく抽出された企業を第1段(中国の場合は第2段)の集落とし,そこから労働者・管理者をそれぞれ相異なる副母集団より,乱数表に基づき一定数無作為に抽出し実施された。
ここに収録の調査はそのうち,インドにおける近代製造工業部門の成長産業である電子機器産業に属する工場の女子労働者及び比較対照としての男子労働者・監督者層を対象とし,1990年実施された職務意識調査と,1994年同一対象者に対して同一の調査票(ただし追加質問含む)で実施されたパネル調査である。その間インドでは1991年の完全自由化政策により経済の急激な転換局面にあり,それに伴い労働者の職務意識にも変化が予想された。そこで91年以前と以後の労働者の職務意識の比較対照を目的として,継続追跡調査を行ったものである。
|
データタイプ(量的調査/質的調査/官庁統計)
|
量的調査: ミクロデータ
|
調査対象
|
[1990年調査] 近代製造工業部門に属する電子機器産業のデリー及びガージアバードにある工場(以下,D工場及びG工場という)で働く女子労働者90名及び比較のための参照グループとして,男子労働者47名ならびに監督者層30名 [1994年調査] 1990年調査と同一の対象者
|
調査対象の単位
|
個人
|
サンプルサイズ
|
[1990年調査] 167人(うちG工場90人,D工場77人) [1994年調査] 80人(G工場残留者57人うち調査不能者4人 D工場残留者28人うち調査不能者1人)
|
調査時点
|
[1990年調査] 1990年12月~91年1月 [1994年調査] 1994年12月~95年1月
|
対象時期
|
|
調査地域
|
インド(デリー(Delhi),ガージアバード(Ghaziabad))
|
標本抽出
|
90年調査において,現地研究者に斡旋役を依頼し,彼らを通じ対象企業の電器機械工場の紹介を受けた。 デリーとガージアバードに在る電子機器産業に属する各々1つの工場よりサンプルを選出した。
サンプルの抽出は,出勤簿(G工場)と在職者名簿(D工場)をそれぞれ抽出枠とし,乱数表を用いた単純ランダム・サンプリング(SRS:Simple Random Sampling)による。ただしG工場とD工場への標本数の配分は,一応デミング(W. Deming)の最適配分公式に従い,女子はG工場では50名,D工場では40名を抽出,男子労働者の標本規模は,女子の5割と定め,同じくSRSによった。監督者層の抽出は,部下に女子労働者を持つ者(女子監督者の場合も含め)の数が限られているがゆえ,有意抽出となっている。
94年調査では,90年調査の時と同じG・D両工場の同一対象者につき,同一の質問票を用いた反復調査を行った。すでに離職していたために面接調査が不可能であった旧サンプルはG工場33名,D工場49名である。
|
調査方法
|
他記式調査票に基づく面接法
ヒンディー語の調査票は,まず日本語の調査票を十分試行・吟味のうえ作成し,そこからの翻訳により現地語へ移し替えた。
1人当たりの面接時間は少なくとも30~40分を要する密度の濃いものである。 原則,勤務時間内,生産現場で通常会議室や応接室が提供され,1対1の面接方式である。ただし,G工場では,生産現場へ調査員が出向き,現場の片隅で質問をする形式のこともあった。
本調査研究全体を通じて,面接調査員は原則として,現地の大学院博士課程の院生を採用し,数ページの調査員「心得」を準備のうえ,おおよそ半日を費やし(1)定義や質問内容の確認,(2)DK(分からない)回答に対するプロービング(回答を促すこと)法の一般ルールの確認などを行ったのち,(3)模擬面接を行う,などの訓練をした。 ただし今回の90年調査では,面接は,4名(男女各2名)の学部学生を調査員として雇い,調査の管理は,テープレコーダーによるモニタリングを中心に厳格性を期したが,調査員の訓練期間が多少不十分であった。
|
調査実施者
|
清川雪彦
|
DOI
|
|
委託者(経費)
|
|
寄託時の関連報告書・関連論文
|
清川雪彦『アジアにおける近代的工業労働力の形成 ―経済発展と文化ならびに職務意識―(一橋大学経済研究叢書別冊)』,2003年2月,岩波書店
|
SSJDAデータ貸出による二次成果物
|
二次成果物一覧はこちら
|
調査票・コードブック・集計表など
|
[調査票]
|
主要調査事項
|
1990年調査,1994年追跡調査ともに同じ調査票を用いているが,1994年調査では「第5節 追加質問」を新たに加えている。
(1)属性等 性別,勤続年数,入社年,他社勤務経験,他社勤務年数,職種,住宅種類,通勤方法,通勤時間,出身地,出身地規模,父親の職業,年齢,出生年,宗教,最終学歴,最終学校の卒業・中退,雇用条件,臨時雇用の年当たり月数,パートタイムの週当たり時間,月給額,健康状態,過去2ヵ月の欠勤日数・遅刻回数・早退回数,未既婚,子どもの数・年齢,同居家族数,働いている家族数,主たる所得稼得者,家族全体の総月収。
(2)職務満足 仕事の満足度,定年まで働く意向,同じ仕事を子どもにも提供されうる場合の考え,職場の誇り(会社に対してか・職務に対してか),昇進と昇給の選択,職場の人間関係,労働条件か人間関係か,生理休暇の取得,自分にとってのよい仕事の意味,現在の賃金への評価,労働時間への評価,職場の安全性,福利厚生施設の満足度,充実を望む福利厚生施設,ボーナスや物価手当,休日や有給休暇,仕事の責任,仕事への熟練や経験の必要性,仕事上の希望,現在の仕事のやりがいなど,時間給と出来高給の希望,転職する際に選ぶ仕事。
(3)仕事の意義と家族志向性 仕事を見つけた経緯,就職時の家族の反対・反対した人,主たる家事担当者,家事労働時間,夫の家事・育児への協力,夫への家事協力希望,妻の就労と夫の家事分担,女性は家庭にとどまるべきか,小さい子供の母親は家庭にとどまるべきか,妻の就労状況,妻の家事への専念希望,妻はもっと家事に時間をさくべきか,家庭と仕事の重要性,仕事をもつ理由,家族収入と仕事,高賃金への転職,超勤と定時退社,仕事の意義,家族に病人が出た場合,家族が原因の遅刻や欠勤。
(4)女子労働力の特性に対する見方 男性と女性の能力は同等か,現在の仕事に対する男性と女性の生産性,女性の管理者としての適性,上司の男女希望,上司との人間関係,経営管理者に重要な資質,男性管理者の女性への差別,女性労働者に関する保護立法,女性への特別保護の必要性,仕事を続ける理由,男女同賃金,男性の高賃金と女性差別,女性は家事に専念すべきか,女性労働者が増えない理由,職場で義憤を感じる時,男女それぞれに適した仕事,男女が全く同じ仕事をすること,女性の技術者,女性の上司,労働組合による女子労働者の権利保護,職場問題の相談相手。
(5)追加質問[1994年調査のみ] 社会的に重要な職業・重要でない職業,熟練形成に重要な要因,熟練や技術水準引上げに最も必要なこと,教育水準に応じた昇給昇進,工場の規則への評価,仕事に競争は必要か,年功序列型賃金システム。
|
公開年月日
|
2009/05/19
|
CESSDAトピック
|
詳細はこちら
|
SSJDAオリジナルトピック
|
国際比較・外交
雇用・労働
|
バージョン
|
登録:2009年5月19日 :
|
特記事項
|
|